アーガル大陸を一望する神殿の地に近いケリカの丘。
そのなだらかな丘陵の頂上に根を下ろす守り木の傍らに佇む者がひとり。
その人物は、吹き上げてくる風にたじろぐ事もなく、肩まで伸びた金糸の髪を風になびかせ、白み始めた西の空をただじっと見つめていた。
差し込み始めた光が大地をやわらかく、闇までをも優しく包み込んでゆく。
「夜が、明ける・・・。」
〜それは人のみが語ることを許された物語 〜
いにしえの昔、まだこの国に神が存在していた頃のこと。
音、炎、氷、鏡、闇の5つの国で構成されるこの地、アーガル大陸では異種族間の争いが絶えなかったという。やがて戦は収束を迎え、幾度となく繰り返されてきた戦は、荒廃した大地をもたらし、大海からは彩りを奪い、大気に呪いの歌を紡がせていた。
腐敗した世界に希望を見出せるはずもなく、誰もがこの世の終わりを予期していた。
そんな彼らを憐れんだアーガルの神々は、世界を甦生させる為の5つの神器、
ひとつは、歌を愛し、平和を愛するドワーフの長に。
ひとつは、短い生命を炎のように燃やし生きる人の子に。
ひとつは、自然に愛され氷の美しさを持つエルフの君に。
ひとつは、鏡に姿を映し、己を正す誇り高き竜の王に。
ひとつは、世界を創世した神々の御手に。
音箱を与えられたアーガルの民は各々の治める国にそれを祀り、国の平穏を願った。
その一方で、音箱を与えられなかった闇の国の民たちは神々への憎悪を募らせていった。
それから数年―――。
平和の兆しが見えかけていたアーガルの地に暗雲は突如として訪れることになる。
闇の国の民が
これが天地を分かつ大戦として現在に伝承される"神話戦争"である。
そして、長きにわたった神話戦争は一人の少女の手によって終わりを迎える。
その少女は各地に置かれた音箱に刻まれた
神話戦争の終結に人々が歓喜の声をあげる中、その少女は行方をくらまし、役目を終えた音箱は姿を変え各地に散らばっていった。
アーガルに平和が訪れると誰もが思っていた。
しかし、光が差せばそこに影はできるもの。
―――神話戦争より1000年。
再びアーガルの地に悪夢が訪れようとしていた。